
2021年11月17日(水)
日本SF作家界の巨匠として知られる星新一さん(1926年―1997年)が、1978年(昭和53年)に書いた作品で、新潮社から発刊されています。
星新一さんは、大好きな作家のお一人でした。
この「人民は弱し官吏は強し」は、かなり昔に読んだ作品なのですが、内容がとても印象的だったので、細かいこともよく覚えています。
星新一さんと言えば、SF(サイエンス・フィクション)のジャンルで、ショートショートと呼ばれる短編の名作を数多く残されていますが、この作品に限っては、実話をベースにしていて、しかも珍しい長編小説です。
主人公の星一(はじめ)のモデルになっているのは、著者である星新一さんの実際のお父様でした。
明治の末、12年間の米国留学から日本に帰ってきた星一は、製薬会社を興します。
日本で初めてモルヒネの精製に成功するなど、事業は飛躍的に発展しますが、保身第一の官僚たちの反感を買い、様々な妨害を受けることになります。
視野が狭く、陰湿な官僚達の姿には、心から腹立たしさを覚えます。
まさに、タイトルになっている通り、「人民は弱し官吏は強し」と言う印象を覚えます。
それでも、星一さんは星薬科大学の創設者として、その名を功績として残しています。
実は、星家と、私の実家である遠藤家とは若干の縁があります。
遠藤家の先祖代々のお墓が、池上の本門寺にあるのですが、その敷地の隣が星家のお墓なのです。
星家は名家なので、お墓としての敷地も、遠藤家に較べると段違いに広いのですが、それでも、お隣と言うことだけで縁を感じます。
(ただ、それだけの縁ですが。)
日本の権威主義というか、官僚第一主義は、当時と比べ、少しは改善されているのでしょうか?
個人的には、まだまだ意識改革は進んでいないと感じます。
「パブリック・サーバント」と言う考え方は、けしてなくしてはいけないと思います。
(官僚は、もっと納税者である国民の気持ちを汲み取りながら、仕事をすべきです。)
いろいろなことを考えさせる、中身の濃い作品であることは間違いないでしょう。
遠藤雅信
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