
2023年8月10日(木)
先日、発刊されたばかりの本で、「三越350年・営業革新と挑戦の歴史」を買いました。
各分野の専門家による共著で、老舗デパート三越の、営業政策(出店戦略)や顧客政策、地方店・海外店対応、広告。宣伝政策等についてまとめられています。
各執筆者のまとめを、総合的にコーディネートしたのは、宮副(みやぞえ)謙司さんと言う学者(現在は青山大学大学院教授)です。
三越の歴史を物語る、貴重な史料等も掲載されていて、とても興味深い本でした。
三越の創業は1673年で、延宝元年に当たります。
この延宝元年と言う言葉は、三越の社員だった者には、強く刷り込まれています。
(なぜなら、「えんぽう」には、元号とは別の意味もあるからです。)
三越では、昔から、トイレのことを「遠方」(えんぽう)と呼ぶ習慣がありました。
この1673年から辿ると、2023年は350年目と言う事になる訳です。
本当に、長いこと続いているものです。
当時は、三越ではなく、越後屋と言うのが屋号でした。
よく、時代劇で登場する、「越後屋、お主も悪よのう」と言う、あの越後屋です。
三越が呉服専業のお店から、新しい業態へとチャレンジしたのが1904年で、かの有名な「デパートメント宣言」が出された年でもあります。
このことから、三越は日本の「元祖・百貨店」と呼ばれるようになりました。
その後、紆余曲折があり、現在に至っていると言う訳です。
かつてデパートは、日本の文化を牽引する施設であり、夢と冒険に満ちた場所でした。
それが今では、衰退産業とか言われるようになり、大いなる逆風の中で揉まれている状況です。
三越単独では利益を産むことができなくなり、不本意ながら、ライバル企業の伊勢丹と2008年(平成20年)に経営統合することになります。
三越の文化(社風)と伊勢丹の思想は、全く異なるものでした。
(社員の個性や考え方、育ってきた環境に、大いなる差異がありました。)
先ほど、トイレのことを三越では遠方と呼ぶと書きましたが、伊勢丹では、同じトイレのことを突き当たりと呼んでいます。
まだまだ、今後も、老舗同士の壁を感じながら、前へ進んで行くことになるのでしょう。
その一方で、例えば、本社機能の一本化等、効率化やコスト削減が図られたこともあり、想定していた以上に効果の出ることもありました。 (店舗の閉鎖や営業形態の見直しと言った、所謂、リストラも合併とともに進められました。)
おそらく、本に書かれている内容は、「過去のいいとこ取り」や懐古趣味の賜物に限定されていると考えられます。
(「昔は良かった」と言う、おじいちゃんの発想です。)
だったら実態はどうなのよと言われても困るのですが、この本により、改めて小売業界における百貨店のあり方(理想と現実も含めて)について、考え直すきっかけとなりました。
かつては革新性を売り物していた企業(呉服店)が、長い時代を経て、保守に凝り固まってしまったのは何故でしょうか?
顧客との関連性は、昔と今とでは、大きく様変わりしているのでしょうか?
ネット等を使った無店舗販売等、販売チャネルの多様化と言う、社会的な情勢の変化もありました。
いろんなことを考えさせられます。
そう言う意味では、ある意味刺激的で、ある意味参考になる、とても有意義な本だと強く思います。
遠藤雅信
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