2021年10月29日(金)
何年か前に読んだ本ですが、閉店後の深夜のデパートを舞台とした小説で、とても面白い内容でした。
しかも、舞台のモデルとなっているのは、三越日本橋本店です。
(物語の中では、「鈴善百貨店」と言う名称になっていますが、実際は明らかに、三越日本橋本店なのです。) (舞台になっている建物の構造等から、自然にそれがわかります。)
(取材の為に、作者が三越日本橋本店を何度か訪れたと言う話も、実は、三越の関係者から聞きました。)
作者は、真保裕一さんです。
真保さんの小説は、スト-リーや背景、登場人物等が、実に緻密に組み立てられていて、ついつい引き込まれてしまいます。
リアリティを追求していながら、荒唐無稽な物語の展開が特徴的です。
個人的には、私の大好きな作家の1人です。
同じシリーズで、「ローカル線で行こう!」と言う作品もあり、これも読みましたが、実に面白かったです。
また、既に映画化された「ホワイトアウト」や「アマルフィ」等の代表作もあります。 この、「デパートへ行こう!」も映画化されたら、さぞかし面白いだろうなと思います。
私が買ったのは、講談社文庫からで出版されたもので、2012年の8月が発売日でした。
(作品として世に出たのは、2009年8月だったそうです。)
ストーリーは、本来、誰もいないはずの深夜の百貨店に、なぜか6名の男女が残留(侵入)してしまい、様々な事件を起こします。
6名の内2名は、その百貨店の社員でした。
もともと、百貨店には警備のシステムがあり、ガードマン(警備会社の人間)も宿直勤務し、定時で夜間巡回を行ったりしているので、このような事態は起こりえないのですが、この小説の中では、たまたま、そうした警備の網を通り抜け、侵入可能となりました。
2人の社員については、店舗に入る時と出た時と各1回ずつ、パーソナルカードをスキャン(非接触タイプの登録)するのがルールになっていて、もし、閉店後に滞留している社員がいれば、リストアップされることになっています。
(これは、社員の安全確認をスピーディーに行う為に導入されているシステムです。) しかし、2人の社員は、このシステムを熟知した上で悪用し、きちんと退出記録を残した上で残留していました。
残りの4名の方はお客様で、営業時間中に普通に入店した上で、売場の一角に身を隠し、閉店時間後もとどまってしまったのです。
警備には万全を期しているはずの百貨店でも、意外と抜け穴があるんだなぁと言うのが、第一印象でした。
そして、人の目による定時巡回だけでなく、人感センサーや赤外線対応の防犯カメラ等、最新鋭の機械警備装置をもっと導入し、活用すべきではなかったかと思いました。
更に、侵入者がフロアを超えて、安易に移動できてしまうのも問題です。
できれば、フロア毎・ブロック毎にシャッター等で閉鎖した方が、侵入者の早期発見につながると言えるでしょう。
小説としての面白さもさることながら、百貨店で警備を担当する人にとっては、ケーススタディーとして、いい教材にもなったのではと思いました。
改めて、真保さんの取材力・洞察力に心から感服しました。
遠藤雅信
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